スバル360 ヤングSSのタコメーターの修理です。(依頼品)
症状
針が全く動かず。
ゆすると針が揺れるので、固着では無さそう。
車両側のハーネスは、オシロで当たるとちゃんとイグニッション波形が出ていました。
ファンクションジェネレータでパルスを入れてみたりしましたが、やはり反応せず。
分解
ゲルマニウムトランジスタが出現!ゲルマニウムダイオードも数点使われています。
メーターには昭和43年の文字があります。今から50年以上前の製品です。
テスターのダイオードレンジで簡易的に当たってみましたが、壊れては無さそうです。
あとテスターで基板を触った時にメーターの針が振れたので、
一番危惧していたメーターコイルは断線していませんでした。
回路図
持ち帰って回路図を起こしました。
構成はチャージポンプ回路でした。
パルスのH期間に0.5uFのコンデンサを充電し、パルスの立下りエッジで電流計(メーター)へ電荷を放電します。
エンジン回転数が上がると充放電回数も増えるので、電流計の指示値が比例的に増加します。
コンデンサの電圧が8.5Vのツェナーダイオードで制限されているので、電源電圧の変動を受けません。
トランジスタは2SB364
スペックはVCEO=-20V, VEBO=-12V, IC=-400mA, hFE=60~150
ダイオードはゲルマニウムダイオードです。スペックは不明です。
メーターは電流計で、フルスケール約600uA。内部抵抗は640Ωです。
1.5kΩの抵抗は実際には3kΩの可変抵抗です。
少ない部品点数でよくできています。先人の知恵です。
故障個所
2個のコンデンサと抵抗の故障でした。ESRが異常になっていました。
- 0.1uF 250V MPコンデンサ
- 0.5uF 50V マイカコンデンサ
- 100Ω 抵抗
コンデンサはどちらもフィルムコンデンサに交換しました。
トランジスタは壊れていませんでした。基板から外して確認すると、hFEは約100でした。
ゲルマニウム半導体は熱に弱いので注意が必要(最大は80℃です……)。
100Ωの抵抗は実測440Ωぐらいになっていました。カーボン抵抗に交換しました。
調整
0~12Vの矩形波で266.7Hzの時8000rpmになるよう調整しました。
入力パルスの形によってズレると思いますので仮の調整です。
スバル360は2ストローク2気筒なので、クランク1回転で2回点火します。
8000rpm時・・・点火周波数 [Hz]=8000 [rpm] / 60 * 2 = 266.7 [Hz]
あ!この時代ならHzじゃなくて「c/s」ですね。
動作確認
実車に取り付けたところ、問題なく動作しました。
2個目の修理依頼
もう1台のタコメーターも直してほしいと渡されたので修理しました。
1個目と同じくコンデンサが壊れていました。抵抗は無事でした。
これも調整したのち返却しました。
波形
参考として回路の波形を掲載します。
入力信号と電流計(メーター)の電圧です。
入力信号の周波数やDuty比が変わっても、メーターに入るパルスの形は同じ。よくできてますよね。